• 取材した農家の方々

  • 大和寒熟ほうれん草の萩原茂さん

    元々は山の仕事をされていた萩原さん。15年前にほうれん草やきくなの栽培を始めるようになり、今では50のビニールハウスで野菜を栽培されています。

    大和寒熟ほうれん草の萩原茂さん
    高地でしかおいしく育たない

    環境を活かした栽培

    冬の寒さが厳しい奈良県の中山間部の栽培条件を活かしたほうれん草作り。寒さにより甘く熟された「大和寒熟ほうれん草」の出荷時期は冬のみ。奈良県の曽爾高原で多く栽培されており、寒い冬になると、出荷で忙しくなります。

    間引き収穫

    間引き収穫

    寒熟ほうれん草は、ビニールハウスで栽培されています。5月〜9月の期間は、種を植えてから、1ヶ月ほどで育つそうです。他の期間は、2ヶ月だそうです。特に寒い時期に作られるほうれん草は、甘みが増すそうです。ビニールハウス内には、所狭しとほうれん草が植えられ、大きく育つと、ほうれん草の葉で緑一面になります。ほうれん草は、一斉に収穫するのではなく、大きくなった順に収穫されるので、収穫が始まったビニールハウス内は、所々茶色い土が顔を出します。これを間引きといいます。間引き収穫がはじまったところを見ると、一見乱雑にほうれん草が植え付けられたかのような印象を受けますが、収穫の際によくほうれん草の大きさが見られ収穫されています。

    ビニールハウスでの栽培

    ビニールハウスでの栽培

    取材をさせて頂いた日は生憎の雨。しかし、ビニールハウス内での栽培だったので、雨に濡れずに取材することができました。なぜ大和寒熟ほうれん草はビニールハウスで栽培されているのでしょうか。尋ねてみました。ビニールハウス内で育てる理由は二つあると語る萩原さん。ひとつは一年を通して栽培できるということ。そしてもう一つは、きれいなほうれん草を出荷できるようにする為だそうです。雨が降ると泥が飛び散ります。土に近く生えるほうれん草は、その泥を浴びやすく、それが理由で痛んでしまうことがあるそうです。きれいで美しい状態で出荷するには、ビニールハウスで、虫や雨による被害にあわないようにし、きれいに育てる必要があるそうです。

    品質は段取りで決まる

    品質は段取りで決まる

    種を撒くとどんどん育っていくほうれん草。しかし、萩原さんを始め、ほうれん草を栽培されている農家の方は何棟かのビニールハウスを所持しているため、一度に全てのビニールハウスに種を撒いてしまうと、一気に育ってしまい、収穫が間に合わなくなってしまいます。その為、萩原さんは育てる腕は段取りで決まると、おっしゃっていました。1つのビニールハウスに種を撒いたら、次のビニールハウスに植えるのは3日後。その次はさらにその日から3日後、と日を置いて種を撒いていくことで、収穫も日を置いてできるようにします。またこの方法であると、毎日仕事することができ、有意義な時間を過ごせせるとのことです。

    家族で取り組む栽培

    家族で取り組む栽培

    ビニールハウス内一面に育つ大和寒熟ほうれん草。収穫に手間がかかります。出荷できる大きさなのか、葉はきれいなのか、それらを確認した後、手作業で収穫されます。萩原さん夫婦、息子さん、そして、農学を学ぶ為に中国から来ている研修生2人の合計5人で収穫の作業をされます。しかし、ほうれん草をとるだけではありません。その後、袋詰めも手作業でされているそうです。その際、泥もきれいに洗い落としてから袋詰めするそうです。つまり、種植えから出荷まで全て萩原さんはこなしていらっしゃいます。収穫だけでも手間がかかるのに、洗う作業もこなす萩原さんのほうれん草には、愛情が感じられます。

    苦労あっての楽しさ

    苦労あっての楽しさ

    2.3年前は温暖な気候により栽培にとても苦労したそうです。また、栽培に関しても、水のやる量に気を使うそうです。水をあげすぎると水分を多く含んでしまい、出荷時に腐りやすくなったり、水が少なすぎると成長がぴたっと止まるそうです。そんな苦労もされながらも、奥さんや研修生の方と和気あいあいとした雰囲気のなかで楽しくほうれん草を栽培されています。毎年気候は変わるため、同じように育てる訳にはいきません。気温の様子を見ながら種撒きの時期などを判断しながら、そして研修生にも野菜の育て方を教えながら、大和寒熟ほうれん草作りに萩原は取り組まれています。